2016年08月28日

Lucy in the Sky with Diamonds

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7/31 明け方
私は地図の上を飛べるので、地図に描かれた海の上を鴎のように飛び、遥々カナダまでやって来た。
巨大な紙製の山脈が聳え立ち、その頂上には山脈の名前がゴシック体で浮かんでいる。等高線が美しい。
遠く前方にレゴで作られたようなこれまた巨大な建造物が見える。topsのチョコレートケーキみたいな外壁にミントグリーンの屋根した尖塔。
夢の視界は歪んでいるので、遠くからそれを眺める私は同時にその塔の中にもいる。賑わう人混み。まるで黒々と見えないくらいに遥か高い天井。ギロチンみたいな門扉。入り口では空の色とガス燈の色が混じり合う。中は段々夜空の色になる。綿菓子の匂い、ポップコーンの匂い、とにかく甘いもの達の匂い。
海から眺める私はあれはディズニーワールドじゃないかしらと思っている。
中にいる私はホラーショーの行列に並ぶかどうしようか迷っている。

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夢に匂いのあるのは良くないことかしらと、もうどこにもいない貴方に問いかける。
最早沈黙しか与えてくれないというのに。



posted by 薄荷緑 at 20:46| Comment(0) | TrackBack(0) | 夜の匣 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年06月19日

ハンサムなダニエル

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夜色の窓硝子が嵌った大きな窓のある浴室にいる。窓硝子の向こうは夜空だが、窓を開けると朝の景色。タイル貼りの浴槽に湯は張っておらず、それでも湯気が立ち込める。W家の浴室に似ているけれどその5、6倍広い。銭湯みたいだ。
真ん中に置かれたテーブルで珈琲を飲む。おかわりは首の長い花瓶に入っていて気が悪い。グラスに注ぐとダイヤ氷ががらがらと音を立てる。窓の外の朝の中では作業員が配管工事をしていた。とんかんとんかん、高い音。眩しい陽光。でも窓を閉めれば夜の浴室。
ハンサムなダニエルが訪ねてくる。ダニエルは黒タートルに黒のハットでとてもシックだ。白髪混じりの口髭は嵐の後の雲の形に剃られている。どんな形かと問われれば困るが夢の中の私はそれが[嵐の後の雲の形]に見えている。その形アシンメトリーで素敵、と褒めると、両手に持っているシェーバーとシェービングクリームを見せながら、シェービングクリームはタリーズ製がベストだねと笑う。確かに黒のスチール缶には見覚えのあるロゴが入っていた。タリーズはそんなものも出してるんだな。クリームは珈琲の匂いなのかしら。スタバのはないのかな、と思ったところで目が覚めた。
posted by 薄荷緑 at 17:26| Comment(2) | TrackBack(0) | 夜の匣 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年06月18日

contempt

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都合のいい夢を見たから今朝の寝覚めは悪かった。弱くて笑うしかない。

日々、線の切れた電話に向かって話しかけているようなものだ。徒労が重なり疲労になる。


posted by 薄荷緑 at 19:35| Comment(0) | TrackBack(0) | 徒然(to kill time) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年05月07日

昔の男が狼になって訪ねてきた。これは比喩ではない。
狼の耳というのは絵本のように三角ではないのだなというのが一番に思ったことだ。玄関先に佇む姿はシベリアンハスキーに似ている。それでも人間に飼いならされている犬よりは銀灰色の毛は針のように美しく尖っているし、やあ、と挨拶をして開けた口の中には明らかに肉や骨を引き裂き砕くための鋭い牙がちらりと見えた。
これが奥深い森の木立の間、なんかであればそれなりに映るのかもしれない。或いは霧深い荒野、であるとか。ところがここは都心まで急行で三十分という中途半端な下町で、姿は立派に狼ではあるけれど、話す声は馴染みのある昔の男の声なのだから、纏うべき野生の緊張感が弛んで伝わるのも致し方のないことなのかもしれない。

やあ、久しぶり、と狼の姿のまま男は言った。久しぶりというのは便利な言葉だ。二十年近くの疎遠も別れの前後の屈託も、その一言でやんわりと中和されてしまう。少なくとも私たちは「やあひさしぶり」なんていう平和的な言葉で再会できるような付き合い方も別れ方もしていなかった。それだけ時間が経ったということかもしれないが。
「久しぶりはいいけれど、その格好はどうしたというのよ」
男は昔から嘘をつくのがうまかった。狼少年というのは嘘つきの代名詞ではあるけれど、だからといって本物の狼になるなんていう冗談が起ころうはずもないではないか。おまけに男は既に少年ではない。
―あんたと別れてからも色々紆余曲折あってね。気がつけばこの姿になっていた。男どもは呆れるし女たちは面倒くさがるし、ここ数年は森で普通に狼として暮らしてきたんだが、ウサギやキツネの数も減る一方で、誰か面倒を見てくれないかとぼんやり考えていたらここに辿り着いていたってわけだ。
「私はその紆余曲折の中身が知りたいんだけど。それにそれなりに酷い別れ方をした女が面倒みてくれるかもしれないなんて、よく考え付いたね」
呆れ果てて思わず男を家に招き入れてしまった。足先にこびりついている泥を落とすために雑巾まで取って。
男は嬉しそうに笑う。あんたはいつもそうだった。俺のやることなすこと全部が気に食わなくてそのくせ全部が気になって、そうして文句を言いながらいつでも俺を受け入れる。
頭には来るが、本当のことではある。人は正論を突き付けられるとむっとする生き物だ。それも全て男から学んだのだ。事実と直面するというのは時に痛みを伴うから。

窓の外はずぶずぶと沈み込みそうな夜の色をしている。カーテンを引く。男は既に芝生色のラグマットの上で寛いでいる。心底気の置けないような様子に再びむっとした。
狼はビールを飲むのだろうか。キッチンで牛乳パックと缶ビールを両手に眺めながら悩む。面倒くさくなって盥に水をいれて持っていったら、気が利かねえな、というので尻尾を踏んでやった。
男には盥にビール。自分には赤ワイン。狼と二人、テーブルをはさんで差し向かいというのはひどく妙だった。おまけにこの狼は喋るし、酒まで呑む。たらりと長い舌は冷蔵庫で冷えすぎたハムのような色をしていた。血のような赤色、というのも想像上のものなのだな。
―またあんたは屈託ばかりの恋愛してるんだろう。
銀色の毛に泡をつけながら男が言う。野生の勘ですか、なんて、くだらない。

―だからきっと俺を呼んだんだろう?

恋人の姿がふと過ぎる。色素が薄く、そこだけ老人のような眸の色。うねるような硬い黒髪。身体にはみっしりと綺麗に筋肉と脂肪が年齢に見合うくらいの割合でついていて、その健やかな重みにいつも私はうっとりとしてしまう。長くて重たい身体。そしてその重たさ分だけの罰を受けている。
不毛だね、と男は繰り返す。不毛で徒労で苦労ばかりだ、と歌うように唱えてラグの上に寝そべった。でもしようがない、あんたはそれを自分で欲しているんだから、と欠伸をひとつして目を瞑る。
けものの寝息は規則正しく健やかだ。三杯目のワインを傾けながら私もつい眠気に襲われる。
男の背中を枕代わりに寝転んでみると、日向のような乾いた匂いがして泣きたいような気になった。これはそう、数年前に死んだ猫の匂いに酷似している。

あと数ミリで眠りの淵を踏み外しそうになりながら、私だって屈託を欲しているわけではないのだ、と抗う。それでも欲しいものが屈託を背負ったものならば、まるごと飲み干すしかないじゃないか。
誰か異論はあるかと問えば、顔のない石像たちが「異議あり」と声高に叫ぶ夢を見た。

posted by 薄荷緑 at 18:57| Comment(2) | TrackBack(0) | Scheherazade(お伽草紙) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2014年12月20日

синий

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電球って集まると綺麗。
青い光の中でそっと肘に触れる手のひら。
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時には主観よりも客観の方がリアルに感じられる。
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そうね、一番安心できる場所なのかもしれない。

posted by 薄荷緑 at 13:21 | TrackBack(0) | 囀り | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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